gimresi's blog

みきと@研修医・内科×とある総合診療専攻医のブログ

片田舎のとある総合診療専攻医のアウトプット用ブログです。たまには関係ないことも綴ります。

リウマチ膠原病疾患でのステロイドの使い方(関節リウマチとリウマチ性多発筋痛症)

  • 関節リウマチ

症例1

脊椎圧迫骨折の既往がある65歳女性。1ヶ月前からの多関節痛を主訴に近医を受診した。左右2〜5指のDIP関節、右肘関節、左膝関節に主張、疼痛あり、血液検査でリウマトイド因子と抗CCP抗体が陽性であった。関節リウマチと診断しメトトレキサート4mg/週で開始となるも改善に乏しく手を床につくことも歩行をすることも困難となったため紹介受診となった。

 

近年関節リウマチの治療はメトトレキセートやサラゾスルファピリジンなどを使用することに加えて初期にはステロイドを併用してなるべく早く関節の炎症を鎮めることで日常生活の質を取り戻し、将来の関節変形のリスクを減らすことが勧められている。しかし確立した投与量などはなく数カ所の関節炎であればステロイド関節注射を選択することもある。

処方例:間質性肺炎や腎機能障害などがないことを確認しつつメトトレキサート8mg/週に増量しステロイド15mg/日を開始。その後メトトレキサートの増量、さらにサラゾスルファピリジンとブシラミンの併用を行いながら、ステロイドの減量を進めて5ヶ月後にはステロイド中止となった。

関節リウマチ治療と入院治療が必要な肺炎を発症するリスク

薬剤

ハザード比

P値

95%CI

PSL(全て)

1.7

<0.001

1.5~2.1

PSLなし

1.0

 

 

PSL5mg以下

1.4

<0.001

1.1~1.6

PSL5〜10mg

2.1

<0.001

1.7~2.7

PSL10mg以上

2.3

<0.001

1.6~3.2

メトトレキサー

1.0

0.884

0.8~1.2

ヒドロキシクロロキン

0.9

0.331

0.7~1.1

レフルノミド

1.3

0.036

1.0~1.5

サラゾスルファピリジン

0.7

0.053

0.4~1.0

インフリキシマブ

1.2

0.182

0.8~1.4

エタネルセプト

0.8

0.051

0.6~1.0

アダリムマブ

1.1

0.816

0.6~1.8

 

  • リウマチ性多発筋痛症

 

症例2

 75歳男性。2ヶ月前から左肩の疼痛を自覚した。近くの整形外科に受診していた。その後右肩、首、背部と痛みが広がり寝返りを打つことも徐々に大変になった。1週間前からは太ももの痛みも出現したためリウマチ性多発筋痛症を疑われて紹介受診となった。

Don’t!! リウマチ性多発筋痛症にいきなりステロイドを処方

初診時からいきなりステロイドを処方することは可能な限り避ける。基本的にリウマチ性多発筋痛症は除外診断となる。巨細胞性動脈炎を合併している場合を除くと治療開始までに1週間程度の猶予があるはずである。感染性心内膜炎などの感染症は潜んでいないか、高齢者発症関節リウマチではないか、巨細胞性動脈炎を合併していないか、甲状腺機能障害でないか、crowned dens syndromeなどの偽痛風ではないか、ANCA関連血管炎ではないかなどの鑑別を考える。

処方例:プレドニゾロン15mg朝1回から開始。3ヶ月以上続けてプレドニゾロン7.5mg/日以上使用する見込みであるためステロイド骨粗鬆症のリスクを減らす目的でビタミンD

とビスフォスフォネート製剤も併用する。

ステロイドの開始

・PSL換算で12.5~25mgの範囲で治療を開始

・糖尿病、骨粗鬆症緑内障がある場合や感染症のリスクがある場合は少ない量から開始する。

・PSL換算で7.5mg未満で30mg以上からの初期投与は避ける。

・経口ステロイドは朝1回投与とする

ステロイドの減量スピード

・症状を基準に調整。CRPやESRは絶対的な判断基準とならない。

・症状が改善しない、炎症反応も下がらない場合は感染症、悪性腫瘍の除外を検討する。巨細胞性動脈炎の合併の可能性を考慮する。

・減量のとりあえずの目標は4~8週以内にPSL換算で10mgに

・PSL10mg以下になると再燃の可能性もありゆっくりと減量1ヶ月に1mgを目安に減量。隔日スケジュールを用いて1.25mgずつ減量など

・最低1年かけてステロイドの中止を目指す。

症状が再燃したとき

・再燃時はステロイドを再発前の投与量に戻し、4〜8週間かけて緩徐に再燃時の量まで減量する。

・再燃のリスクとしては高齢者、女性、プレドニゾロン換算10mg未満からの治療導入、早期のステロイド減量、診断の遅れなどがある。

ステロイドの減量に難渋する場合は「診断の誤り」や「感染症などの合併症の存在」を考慮する。

専門医へのコンサルトの目安

・60歳未満での発症

・末梢関節炎を伴う場合

・発熱などの全身症状を伴う場合

・炎症反応が低値な場合

ステロイドの副作用の既往がある場合

ステロイドの副作用のリスクが高い場合

ステロイド治療に抵抗性の場合

ステロイド治療中に再燃する場合