小児科診療 発疹で外来受診の時の対応
はじめに
小児科で遭遇する発疹は感染症、アレルギーなどがその多くを占めます。外観だけでは診断がつかないことが多く、予防接種歴の聴取、全身の皮膚の観察が特に大事である。
Must rule out(必ず除外しなくてはいけない疾患)
・麻疹・風疹
・重症アレルギー
・川崎病
ちなみに「発疹」という言葉は皮膚に現れる病変の総称でありその言葉には紅斑、紫斑、色素斑、白斑、丘疹、結節、水疱、膿疱、嚢腫、膨疹などが含まれる。つまりカルテ記載の際に〜の部分に発疹があるということはその病変に対して何も表現していないということと同義である。
発疹のカルテ記載の際に必要な情報
・種類(平坦なら紅斑、紫斑、色素斑、白斑など 隆起なら丘疹、結節、水泡、膿疱、膨疹など 陥凹ならびらん、潰瘍など)
・数 ・形状(円形、楕円形、不整形、線状など) ・大きさ ・表面 ・色調 ・硬さ ・分布
- 紅斑
病歴聴取でおさえるべきポイント
・広がり方 体幹なら麻疹、風疹、突発性発疹 頸部から始まるなら溶連菌感染症 傷から始まるならTSS
・発熱との関連 発熱と同時なら溶連菌感染症、川崎病 解熱後なら突発性発疹 二峰性なら麻疹
・随伴症状 痒みなら溶連菌感染症 痛みならTSS
・色素沈着 麻疹
・周囲に流行性の感染症はないか
・ワクチン接種歴はあるか(麻疹・風疹ワクチンを接種していなければ鑑別にあげるべき)
紅斑の身体所見
・眼球結膜充血:川崎病 眼視を伴う結膜充血:麻疹
・気道狭窄音:アレルギー 鼻水・咳嗽・麻疹:カタル症状→麻疹
・口腔内 コプリック斑:麻疹 いちご舌:川崎病 軟口蓋の点状出血:溶連菌感染症 永山斑:突発性発疹
扁桃炎:溶連菌感染症 EBウイルス感染症 アデノウイルス感染症(そのほかのウイルス感染症)
・口 口唇充血:川崎病
・頸部リンパ節腫脹:川崎病、EBウイルス感染症、耳介後部リンパ節なら風疹
・BCG痕の発赤:川崎病
水疱の病歴聴取
・広がり方 体幹なら水痘(時間経過で広がる) 局所なら接触皮膚炎など
・随伴症状 痒い:水痘、スティーブンジョンソン症候群 痛み:壊死性筋膜炎、帯状疱疹
・出現と消退を繰り返す:口唇ヘルペス
・周囲に流行性の感染症はないか
・基礎疾患 アトピー性皮膚炎ならカポジ水痘様発疹症を鑑別に
・水痘ワクチン:2回接種でリスクは低下する
水痘の身体所見
・体幹 全体:紅斑、丘疹、水疱、痂皮が混在→水痘 片側だけ:帯状疱疹
・手掌足底:手足口病(エンテロウイルス、コクサッキーウイルス感染)
小児における発疹の特徴
|
分布 |
大きさ |
色調 |
水疱 |
癒合 |
色沈 |
痒み |
圧迫消退 |
麻疹 |
首、毛髪生え際、顔面→四肢、体幹 |
数ミリ〜1cm |
紅〜暗紅 |
― |
+ |
+ |
± |
+ |
風疹 |
顔面→全身に広がる |
2〜5ミリ |
淡紅色 |
― |
― |
― |
― |
+ |
伝染性紅斑 |
顔面紅潮→四肢の斑状紅斑→レース状発疹 |
りんご様 |
― |
+ |
― |
+ |
― |
|
体幹・四肢近位部→四肢・顔面 |
5ミリ前後 |
淡紅色 |
― |
± |
― |
― |
+ |
|
頸部→体幹・四肢 |
潮紅 |
― |
+ |
― |
+ |
+ |
||
水痘 |
頭皮・顔面・体幹→全身 |
1cm以下 |
+ |
― |
± |
+ |
― |
|
手掌・足底・臀部 |
2〜3ミリ |
紅斑を伴う白っぽい水疱 |
+ |
― |
― |
― |
― |
おまけコプリック斑画像