易疲労・倦怠感に対する漢方薬処方
- 良い適応となる状態
重篤な器質的疾患のない時、外科手術後、悪性腫瘍で抗がん剤治療や放射線療法を行なっている時、および慢性閉塞性肺疾患、軽うつ状態、機能性胃腸症などに付随して易疲労・倦怠感を訴える時
処方前に押さえておくべきこと
・肉体的疲労は慢性疾患、悪性腫瘍によるものが多く精神的疲労は精神神経疾患、心身症に伴うものが多い。
・睡眠時無呼吸症候群も日中に眠気や倦怠感を訴えることから鑑別が必要
第一選択薬:補中益気湯
第一選択薬が効かない時やそのほかの特徴的な症候を示している場合には?
- 体力なし・腹力弱い
→食欲不振・痩せ・下痢傾向:人参湯
→やせが強い・倦怠感が強い:四君子湯
→やせが強い・水様下痢:真武湯
- 体力なし・腹力やや弱い〜普通
→皮膚粘膜乾燥・貧血傾向・手足冷え→十全大補湯
→皮膚粘膜乾燥・貧血傾向・呼吸器症状みぎ人参養栄湯
→めまい・頭痛:半夏白朮天麻湯
- 体力中等度以上・腹力中等度以上
→高齢者・腰痛・排尿障害:八味地黄丸
→メタボリックシンドローム・季肋部の抵抗・苦満感が強い・強い肩こり:大柴胡湯
- 疲労・倦怠感とは?なぜ起こる?
・1日の休息で改善する:生理的疲労
悪性腫瘍・結核などの重篤な感染症はまず第一にスクリーニングすべき疾患。膠原病や甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、糖尿病のような内分泌疾患なども鑑別に。
- 漢方医学の考え方
この3つに着目して評価する。
1 他の身体症状の併存はないか? 2 精神症状はないか? 3 身体所見・腹部所見は?
・痩せ型で食後に眠くなる、風邪をひきやすく治りにくいという場合は気虚と考えられるため、人参剤(六君子湯、人参湯など)、参耆湯(補中益気湯、十全大補湯など)で消化吸収機能を賦活し栄養状態を改善して回復を図る。
・精神的ストレスが強く、不眠、軽い抑うつ状態にある場合は気鬱と考える。胃腸虚弱では香蘇散など、胃腸虚弱でなければ加味逍遙散などを用いる。
・中高年の胃腸が丈夫なもので腰痛、下肢痛、下半身の脱力感、排尿障害、性機能低下などを伴い腹部触診で上腹部に比べて下腹部または臍下部が柔らかい場合には腎虚と考えられ、八味地黄丸を用いる。
・体格がいい筋肉質なもので季肋部の緊張が強い場合は大柴胡湯などを用いる。
- 腹証の把握
・心下振水音:虚証の徴候である。人参剤(六君子湯、四君子湯、人参湯など)、参耆剤(補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯、半夏白朮天麻湯、聖清益気湯など)を考える。
・正中芯:虚証の徴候である。上腹部のみの場合は人参剤・参耆剤、下腹部のみの場合は八味地黄丸など、上下ともにある場合は人参剤・参耆剤・真武湯・小建中湯・黄耆建中湯などを考える。
・胸脇苦満:柴胡の配合された処方、柴胡剤を考える。