gimresi's blog

みきと@研修医・内科×とある総合診療専攻医のブログ

片田舎のとある総合診療専攻医のアウトプット用ブログです。たまには関係ないことも綴ります。

風邪診療についてまとめ 発熱+消化器症状型

発熱に加えて消化器症状つまり下痢を伴っていればそれが細菌性かウイルス性かはたまた炎症性腸疾患などによるものかなど鑑別は様々あるが頻度の高いものとしては圧倒的に感染性胃腸炎ということになるだろう。

まずは感染性胃腸炎について話をまとめる。

 

臨床現場で大事なことは細菌性であるかウイルス性であるかという違いではない。

なぜなら細菌性であってもその多くは自然治癒する病態であることが多く、また細菌性かウイルス性かを初診時で判断することは非常に困難であることもその理由の一つである。

(ただしノロウイルス迅速検査は①3歳未満の患者、②65歳以上の患者、③悪性腫瘍の診断が確定している患者④臓器移植後の患者⑤抗悪性腫瘍剤免疫抑制剤、又は免疫抑制効果のある薬剤を投与中の患者に限っては保険適応で調べて良いとされている)

そこで重要なことは症状の強さである。

・38度以上の発熱

・下痢が6回以上

・腹痛が強い場合

など指標があるが最も大事なことはその患者さんが脱水の状態にあるかどうか?という視点である。

また小児の場合では総合的にぐったりしているかどうか? 症状はピークを超えており経口摂取できそうか?

といった視点が大事となる。

 

細菌性として特異度が比較的高い検査としてグラム染色で便中白血球の有無(感度73、特異度84)やカンピロバクターが起炎菌として特徴的なgull wingが見えるかなどがある。

抗菌薬が必要な腸炎

Enteric fever

Salmonella Typhi

全例必要

大腸型

Shigella

全例必要

大腸型

Salmonella non-Typhi

重症例、特定の疾患を有する

大腸型

Campylobacter

重症例、特定の疾患を有する

 

結局誰に抗菌薬を処方するの?

・人工物が入っている患者さんではサルモネラなど血管親和性が高い微生物による留置部位への感染リスクから細菌性が疑われる場合は抗菌薬投与の適応がある。

・大動脈瘤がある患者も感染性動脈瘤のリスクとなることから抗菌薬投与を検討する。

 

カンピロバクターについて

・細菌性腸炎の原因として最も多いのがカンピロバクター

カンピロバクター腸炎は初期は消化器症状を伴わない高熱のみとなることが多い。

・疑えば積極的にグラム染色

 

急性胃腸炎に隠れた重篤な疾患を見つけるためには?

・胃腸炎の主症状である嘔気・嘔吐は全ての疾患の初期症状になりえる。

・ウイルス性胃腸炎の典型例を知る必要がある。

ウイルス性胃腸炎の典型例は最初は痛みはみぞおちの部分で嘔気・嘔吐が中心となる。通常は嘔吐は24時間程度でピークを超えそのあとは頻回の水曜下痢便となる。

つまりいわゆる風邪と同じように、「嘔気・嘔吐」「腹痛」「下痢」の3症状が同時期に同程度あれば「お腹の風邪(ウイルス性胃腸炎)」と言っても良い

 

腸炎にしてはおかしいと思える病歴。この病歴が聴取されれば他の疾患も鑑別にあげる。

・嘔吐は24時間程度でピークを越える。その後下痢が典型的

・24時間以上続く嘔気・嘔吐のみはおかしい。

・下痢のない胃腸炎はおかしい

・頻回の水様下痢便ではないのはおかしい

・腹痛のない胃腸炎はおかしい

 

腸炎と誤診されやすい疾患のパターン

虫垂炎:消化器疾患として頻度が多い。右下腹部へ疼痛の移動があれば受診するように説明する

・糖尿病性ケトアシドーシスDKA):頻回に嘔吐、呼吸が速い、口腔内乾燥著明の場合は尿糖、ケトンをチェックする。

・下痢という主訴を聞いて実は消化管出血である場合など。黒色弁でないか聴取