COPDについてまとめてみた
まずCOPDの定義
COPD(chronic obstructive pulmonary disease)
日本呼吸器学会では「有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限を呈する疾患である。この気流制限には様々な程度の可逆性を認め、発症と経過が緩徐であり、労作性呼吸困難を生じる。」
気流制限とはCOPDによって肺胞壁が破壊されると末梢気管支を支えていた肺胞が消失するため、呼気時に気道が閉塞するようになる状態。
つまり末梢気道閉塞による気流制限と肺胞壁破壊による肺拡散能低下がCOPDの病態。
COPDはどんな人になるのか
喫煙はCOPD発症の一番のリスク。しかし喫煙者の一部で発症するため喫煙に対する感受性の高い喫煙者が発症しやすいと考えられる。でも喫煙歴が40パックイヤーズ以上であるとCOPD発症リスクは高い(+LR3.3)
*ちなみにパックイヤーとは1日に吸うタバコの箱数✖︎年数
なぜCOPD患者は痩せている人が多いのか?
・COPD患者は呼吸運動に伴う消費エネルギーが上昇しているため特に進行したCOPDでは痩せ型低栄養が多い。
・肺の過膨張から胸郭の前後径が拡大して「ビア樽状胸郭」を認めることがある。
首周囲の所見
・気管短縮
・胸鎖乳突筋の発達
・吸気時の鎖骨上窩の陥没
・頸静脈が吸気時に潰れて呼気時に怒張する
呼吸音や呼吸様式について
・COPD急性増悪時になると気道狭窄を反映してwheezeや呼気延長、口すぼめ呼吸を認める。
・進行したCOPDでは肺胞が破壊されて空気の出入りそのものが少なくなるため呼吸音が減弱する。
・フーバー兆候と言われる吸気時に下部肋間部の陥没所見を認めることがある。
そのほかの身体所見
・COPD患者にばち指を認めた時は肺癌を疑う。
・肺の過膨張から縦隔が下方偏位して心尖拍動の位置が剣状突起付近となる。
検査所見
・動脈血ガス検査では安静時には慢性呼吸不全を反映した所見(慢性呼吸性アシドーシス)を呈する。
・心電図では右心負荷を反映したⅡ・Ⅲ・aVf誘導でP波の増高や右軸偏位、右脚ブロック、V1でのR波の増高、V5―V6誘導での深いS波を認める。
・胸部CTでは気腫性変化。
COPD診断基準
・CTで気腫性変化!というわけにはいかない。気腫性変化が見られない非気腫肺(末梢気道偏位型)もある。
・COPDの診断基準はタバコ煙を主とする有害物質の長期にわたる吸入暴露を危険因子とし、慢性に咳、喀痰、労作性呼吸困難などの臨床症状がみられるかつ以下の2つを満たす時
- 気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーでFEV1/FVC<70%を満たすこと
- 他の気流閉塞を来たしうる疾患を除外すること
(鑑別を要する疾患としては・気管支喘息・びまん性汎細気管支炎・先天性服鼻腔気管支症候群・閉塞性細気管支炎・気管支拡張症・肺結核・じん肺症・肺リンパ脈管筋腫症・鬱血性心不全など)
・COPDの急性増悪とは?
定義:急性の経過で普段の状態よりも息切れが増悪したり、咳嗽・喀痰の量が増えたり、喀痰の質が膿性になってきたとき(1秒率や1秒量の変化ではない)
・COPD急性増悪の重症度分類(Anthonisen分類)
重症:①呼吸困難の増悪 ②喀痰量の増加 ③喀痰の膿性度の上昇
中等症:上記3つのうち2つ以上
軽症:上記3つのうち1つ以上+次の項目のうち1つ以上を満たす(咳嗽、wheeze、明らかな原因のない発熱、5日以上の上気道感染、基礎値より20%以上の呼吸数増加、基礎値より20%以上の心拍数増加)
COPD急性増悪時の治療(ABCアプローチ)
A:Antibiotics
抗菌薬はCOPD急性増悪の気道感染に問題となる菌として肺炎球菌、モラクセラ、インフルエンザ桿菌などであるためCTRX2g/24hもしくはABPC/SBT3g/6hを開始する。緑膿菌カバーが必要な場合はTAZ/PIPC4.5/6hを開始する。投与期間は決まったものはなく5〜7日間程度。
B:β agonist メプチン、ベネトリンなどのβ刺激薬を使用する(1日4回+呼吸苦あれば)
C:corticosteroid PSL30〜40mg/日程度、5〜14日(高血糖などの副作用に注意)もしくは40〜80mg/日を5〜7日間(投与期間には明確な決まりはない)