鎮咳薬・喀痰調整薬の使い分け
鎮咳薬・喀痰調整薬とは?
あくまで症状改善薬であり病気自体の治療薬ではない。
例えば、細菌性肺炎などにより膿性痰があれば抗菌薬で治療すべきだし、気管支喘息やCOPDであれば慢性呼吸器疾患として特異的な治療を行うべきである。鎮咳薬・喀痰調整はその上で処方するべきである。
湿性咳嗽・乾性咳嗽の観点から見た鎮咳薬と喀痰調整薬の使い分け
咳嗽には2種類しかない。喀痰を伴う湿性咳嗽か伴わない乾性咳嗽だ。
湿性咳嗽とは気道過分泌の病態が存在、喀痰を排出するために咳嗽が出現している。よって湿性咳嗽における対症療法の基本は喀痰調整薬である。(ただし激しい咳嗽による体力の消耗、嘔吐の誘発、不眠、QOL低下、気道上皮損傷による血痰・喀血などがあれば鎮咳薬も処方する場合がある)
乾性咳嗽ではQOLを低下させる咳嗽の場合には積極的に鎮咳薬を処方する。
鎮咳薬
・麻薬性中枢性鎮咳薬
麻薬性中枢性鎮咳薬はオピオイド受容体を活性化し延髄孤束核にある咳中枢を抑制して鎮咳作用を示す。高い鎮咳効果が期待できる反面、便秘、眠気、嘔気、呼吸抑制作用などの副作用が起こりうる。代表薬剤としてはコデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩がある。禁忌としては重篤な呼吸抑制や肝機能異常を有する患者、気管支喘息発作中の患者、慢性肺疾患に続発する心不全患者。ちなみにジヒドロコデインリン酸塩を用いた配合薬には錠剤やシロップ剤の剤形がある。
・非麻薬性中枢性鎮咳薬
鎮咳効果は麻薬性には及ばないが副作用が少ない。代表薬剤としてはできすトロメトルファンリン酸塩(メジコン)、チペピジンヒベンズ酸塩(アスベリン)、ジメモルファンリン酸塩(アストミン)、エプラジノン塩酸塩(レスプレン)、クロペラスチン(フスタゾール)、ペンプロペリンリン酸塩(フラベリック)、クロフェダノール(コルドリン)などがある。
コデインリン酸塩と並んでよく使われるのがメジコンであるが、眠気を催すことがあるので自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意することと注意されている。
喀痰調整薬
・喀痰調整薬(去痰薬)には4つの種類がある。
- 粘液溶解薬:ムチンを溶解して粘稠度を低下させる薬剤でブロムヘキシン塩酸塩(ビソルボン)、N―アセチルシステイン(ムコフィリン)、メチルシステイン塩酸塩(ベクタイト)、エチルシステイン塩酸塩(チスタニン)などがある。
- 粘液修復薬:気道分泌状態を修復して、気道粘液構成成分を正常化させる薬剤でカルボシステイン(ムコダイン)などがある。
- 粘液潤滑薬:肺サーファクタントに分泌増加により気道粘液と気道上皮の粘着性を低下させ、粘液クリアランスを高める薬剤でアンブロキソール塩酸塩(ムコソルバン)がある。
- 気道分泌細胞正常化薬:杯細胞の過形成を抑制して、気道粘液産生を制御する薬剤でフドステイン(クリアナール)がある。
分泌物排除の目的には①〜③を、喀痰の産生、分泌の抑制には④を用いる。
とはいえ種類が多いしどの薬剤を使用していいかわからない。ということで最低限覚えておく去痰薬
最低限は3つ
・ムコソルバン:慢性的にキレが悪い喀痰 (COPD患者に対して使うなど)
・ムコダイン:量の多い喀痰
・ムコフィリン:急性期のキレが悪い喀痰