悪心・嘔吐に対する漢方薬処方
- 良い適応となる状態
急性および慢性胃炎、感染性胃腸炎、機能性胃腸症、二日酔いなど
処方前に押さえておくべきこと
・心下振水音、胸脇苦満などの腹証を把握することが鑑別に必要
・悪心・嘔吐のほかの随伴症状を問診で把握することも大切
・胃がんや胃潰瘍、腸閉塞、胆石などでも悪心・嘔吐を生じることがある。頭痛を伴う場合はくも膜下出血、めまいを伴う場合は髄膜炎、メニエール病、胸痛を伴う場合は心筋梗塞、器質的疾患、特に悪性腫瘍の除外が必要である。
第一選択薬: 水毒症状と考えて利水剤として五苓散!
第一選択薬が効かない時やそのほかの特徴的な症候を示している場合には?
体力なし・腹力弱く胃腸虚弱傾向
→常に悪心があって食べられない・つわり:小半夏加茯苓湯(冷たくして飲む)
→冷えが強い・上腹部が冷えている・唾液がたまる・下痢:人参湯
→食欲低下・やせが強い:四君子湯
→胸焼け・神経質・冷え性・空腹時に悪化:安中散
→六君子湯証で悪心が強いもの・つわり:二陳湯
→頭痛・肩こり・手足の冷えを伴う:呉茱萸湯
体力中等度ないしそれ以上
→みぞおちの抵抗・苦満感・ゲップ・下痢:半夏瀉心湯
→喉のつかえ感・胸の不快感・不安感がある:半夏厚朴湯
→胃部膨満感・ガス貯留感・ゲップ:茯苓飲
季肋部の抵抗・苦満感を呈する場合
→軽度・ストレス・腹痛・腹直筋緊張:柴胡桂枝湯
→中等度・微熱・口の苦味:小柴胡湯
→やや強度・ストレス・腹直筋緊張:四逆散
→強度・便秘:大柴胡湯
- 悪心・嘔吐とは?なぜ起こる?
・悪心は胃や胸がムカムカして吐きたくなる感覚である。嘔吐は胃から飲食物や消化液が逆流して吐くこと
・急性および慢性胃腸炎で胃や腸の動きが低下し、嘔吐反射中枢が刺激された場合に多く見られる。
・機能性胃腸症やストレスなどが原因で時散る神経失調症状として生じることもある。
- 漢方医学の考え方
・水毒では口渇、尿量減少や下痢、浮腫、頭痛、めまいなどがある。気候に変化を受けることも水毒を考慮する。