ステロイドカバーについてまとめてみた
1 ステロイド使用者の周術期・急性ストレス期にステロイドカバーが必要な理由は?
→内因性のステロイド分泌が抑制されているため
2 ストレス時急性腎不全ではどのような症状、検査所見があるか?
→低血糖・ショック、意識障害、電解質異常(低ナトリウム、高カリウム)の4つ+好酸球増多
3 どのような患者にステロイドカバーが必要か?
→PSL7.5mg以上かつ3週間より長期のステロイド投与
4 実際どのようにステロイドのカバーを行うか?
→侵襲の程度によって投与量を決める
重症患者で副腎不全の考慮が必要な4つの場合
ショック |
適切な輸液・昇圧薬に反応しない低血圧 |
意識レベルの低下 |
無気力、原因不明の意識障害 |
一般的にはストレス環境下では高血糖になることが多い |
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電解質異常 |
低ナトリウム(135以下)、高カリウム |
次のような場合にはステロイドカバーは行わなくて良い
・投与期間によらずPSL5mgより少量の投与
・投与量によらずPSL投与が短期間(3週間以内)
しかしあくまで絶対的なものではなく、疑えばカバーすればいいとも考えられる。
ステロイドカバーが適応となる状態
・3週間より長期間かつPSL7.5mg以上のステロイド投与
・クッシング症候群を認める患者
例外的にHPA系抑制があると考えられる場合
量によらず以前にステロイドを内服していた場合 |
特に3週間より長期にわたりPSL7.5mg異常を内服していた場合は注意が必要(HPA系の機能回復には1年程度かかることがあるので最低1年はステロイド内服歴を遡る必要がある) |
ステロイド吸入 |
フルチカゾン(フルタイド、アドエア)ブテソニド(パルミコート、シムビコート)>1500μgで吸入ステロイドでもHPA系の抑制が起こる。 |
ステロイド外用薬 |
Strongest クロベタゾール(デルモベート)2g/day以上もしくはVery strong ベタメタゾン(リンデロン)7g/day以上でHPA系の抑制が出てくる。 |
ステロイド関節内投与・硬膜外投与 |
3ヶ月以内に施行している場合 |
フェニトイン、リファンピシン、フェノバルビタールなど |
実際の症例に対するステロイドカバー
侵襲(手術・疾患) |
ヒドロコルチゾン容量 |
1時間以内の局麻手術 |
ステロイドカバー必要なし |
Minor ・鼠径ヘルニア修復 ・大腸内視鏡検査 ・中等度以下の嘔吐・胃腸炎 |
術前にヒドロコルチゾン25mgを1回点滴静注しそのあとに通常のステロイド量へ |
Moderate ・開腹の胆嚢摘出 ・半結腸切除 ・関節置換術 ・肺炎・重症胃腸炎 |
ソルコーテフ50mg点滴静注。その後20〜25mgを8時間ごとに24時間投与する。そのあとは通常のステロイド量へ減量。 |
Severe ・主要な呼吸器手術 ・膵頭十二指腸切除 ・肝臓切除 ・膵炎 |
ソルコーテフ100mgを麻酔導入前に点滴静注。50mg/回を6時間ごとに24時間投与。25mgを6時間ごとに24時間投与しその後通常のステロイド量へ。 |
Critically ill ・敗血症性ショック ・多発外傷 |
ヒドロコルチゾン50〜100mgを6〜8時間ごとまたはヒドロコルチゾン100mg点滴静注。200〜300mg/日で持続点滴をショックが改善するまで継続。トータル数日〜1週間かけて減量 |