便秘・下痢に対する漢方薬処方
- 良い適応となる状態
悪性腫瘍などの器質的疾患のない常習便秘や下痢の場合は過敏性腸症候群が漢方治療の良い適応となる。
処方前に押さえておくべきこと
・便秘の場合:通常の下剤で腹痛やひどい下痢になる症例(虚証)には大黄を含む方材の処方には注意。使用には少量から開始する。
・下痢の場合:下痢の原因を探る。感染性のものであれば抗菌薬を用いることもあるが、西洋薬で治療効果の薄い慢性化した状態に漢方薬が用いられる。
- 便秘編
第一選択薬:便秘以外に特別な症状がない場合は大黄甘草湯
第一選択薬が効かない時やそのほかの特徴的な症候を示している場合には?
実証型
→大黄甘草湯が効かずに残便感があり、腹力中等度以上:調胃承気湯
→腹部膨満し硬く張り、皮下脂肪が厚い、抑鬱状態:大承気湯
→自覚的に上腹部が張り胸脇苦満があり、肩こり、不眠症状がある:大柴胡湯
→のぼせ気味で精神不安、顔面紅潮、腹力中等度以上:三黄瀉心湯
→体力あり、のぼせ、頭痛、精神・神経症状強く、小腹急結、瘀血あり:桃核承気湯
高齢者
→体力のない高齢者・夜間多尿・大病後の潤いのない便:麻子仁丸
→皮膚乾燥、手足のほてり、兎糞状の便:潤腸湯
→夜間頻尿・疲労感強く・腰痛・夕方の歌詞の浮腫:八味地黄丸
小児や胃腸虚弱型
→中間証・胸脇苦満を目標に。小児の便秘:小柴胡湯
→虚証・腹満あり・兎糞状の便:小建中湯
- 下痢編
第一選択薬:腹痛、腹満のある下痢には:桂枝加芍薬湯
第一選択薬が効かない時やそのほかの特徴的な症候を示している場合には?
→便秘傾向ではあるが一度出ると軟便や下痢便になる:桂枝加芍薬大黄湯
→虚弱体質で腹痛が強い場合:小建中湯
→ガス貯留と冷えのある下腹部痛・超蠕動亢進を認める:大建中湯
→小児の下痢・口渇・尿量減少する水溶性下痢:五苓散
→手足や腹部の冷え・虚証の下痢:人参湯
→もたれや悪心を伴う中間証から実証の下痢:半夏瀉心湯
→頭痛や四肢の冷えを伴う虚弱体質:呉茱萸湯
→胃腸虚弱で抑うつ傾向:香蘇散
→腹痛はあまりない・虚証や高齢者の下痢、食事の後にすぐ生じる下痢、早朝の下痢:真武湯
→人参湯や真武湯が無効な下痢:啓脾湯