PPIの使い分けをまとめてみた
はじめに
現在発売されている胃粘膜保護薬は多種多様でその中でもプロトンポンプインヒビター(PPI)は大きく分けて4つの商品が発売されており、研修医にはなんでもいいからPPI出しといてなどいう上級医、指導医がよくいるものである。確かにガイドライン上でもその適応・効果の違いは示されておらず、確かにいずれでも良いのかもしれない。そこで今回はそうは言っても何を出そうかと悩む研修医・若手医師むきに勉強した内容をまとめる。
PPIを処方する場面はNSAIDs・抗血小板薬による潰瘍予防やピロリ除菌、胃潰瘍、逆流性食道炎(GERD)など多い。商品としては5つと思えばいいだろう。その5つを以下にまとめる。
1 オメプラゾール:オメプラール
2 ランソプラゾール:タケプロン
3 ラベプラゾール:パリエット
4 エソメプラゾール:ネキシウム
5 ボノプラザン製剤:タケキャブ
1 オメプラゾール:オメプラール
・最も古いPPI製剤。
・点滴薬もあり、溶解と前後フラッシュが必要。(費用の問題からかタケプロンより採用が多い)
・肝代謝
・代謝経路にCYP2C 19関与、薬物相互作用に注意が必要
相互作用
本剤は、主として肝代謝酵素CYP2C19及び一部CYP3A4で代謝される。
また、本剤の胃酸分泌抑制作用により、併用薬剤の吸収を上昇又は低下させることがある。(DIより引用)
2 ランソプラゾール:タケプロン
・OD(口腔内崩壊錠)がある。
・タケダ製薬のプロトンポンプインヒビターの略
・点滴薬あり(採用があまりない オメプラゾールの方が安いから?)
・肝代謝
・代謝経路にCYP2C 19関与、薬物相互作用に注意が必要
・collagenous colitis(原因不明の慢性腸管炎症により下痢を主訴とする消化管吸収機能異常を呈する疾患であるmicroscopic colitisの病理学的特徴の一つ)の高リスク薬剤として知られる。
3 ラベプラゾール:パリエット
・パリエットは壁細胞のHK-ATPaseに作用することで効果を発揮するので壁細胞(parietal cell)からパリエットと命名。
・他の薬剤と相互作用が少ない
・肝代謝
・代謝経路にCYP2C19関与せず、非酵素的に代謝される。他のPPIが効かない時はパリエットに変更すると効果が認められることがある。
・薬効の個人差が少ない。
4 エソメプラゾール:ネキシウム
・next millenniumの略。次の1000年間使われますようにという意味で命名。
・オメプラゾールを元に作られた薬剤で光学異性体の片方のみを抽出しており、CYP2C19の影響を受けにくい。
・肝代謝
5 ボノプラザン製剤:タケキャブ
・カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P―CAB)とタケダ製薬を合わせてタケキャブと命名。
・タケプロンと異なり胃酸で活性化されなくても効果を発現するので即効性がある。
・効果の発現が早い。
・肝代謝
・代謝経路にCYP2C19が関与し、薬物相互作用に注意
結語
・ガイドラインではそれぞれの効果の差はないとされている。
・内服できない患者にはランソプラゾールOD錠、それでもダメならオメプラゾール静注。
・ワーファリンなどの薬を常用薬がたくさんある人であればCYP系の影響を受けにくいパリエット。
・内服で即効性を期待するのであればタケキャブ